からだとこころは繋がっている、とよく言われます。
マッサージの仕事をする様になってから、その事を本当に肌で実感します。
からだはこころを映し出していて、こころはからだを映し出している。それぞれが鏡になっているんですね。
毎瞬のそれぞれの反応、もう少し長いスパンでのそれぞれの反応に現れて、私達はその反応の連続の中に生きているという感じ。
その事を表すのに沢山のエピソードがありますが、私が触れるという事を始めた頃のエピソードを一つ。
ある病院の緩和ケア病棟でアロママッサージのボランティアをしていた時の事です。
アロママッサージは病室に伺い、受けたいと言われた方に行っていました。
ある部屋に伺うと、丁度今から点滴の針を入れようと看護師さんが準備をしている時でした。後で再度来た方が良いかと聞いたところ、いや、今やって欲しいと言われ、腕に点滴をするので、脚をマッサージする事にしました。
その部屋の患者さんは60前後のとても紳士的な男性で明るく迎えて下さいました。これから点滴の針を入れるのだけど、いつもなかなか針が入らなくて、これがとにかく一番苦痛なんだ、との事。最初入った時は今からその処置が行われる事に緊張した表情だったのですが、初対面の私に対して、看護師さんと針が入らなくて困る話を本当に痛くて辛いだろうに、明るく面白く話してくれました。
私は足元から少しでも気がまぎれたらいいなと思いながら男性の好みのアロマオイルでマッサージをしながら、看護師さんも明るくユーモアのある会話をしながら処置を進めていました。
すると、その時はすんなり針が入ったのです。看護師さんも患者さんもとっても大喜びでまた更に会話が弾みました。
病状が進み、筋肉が落ち、痩せたからだの血管が細くなっていた事はもちろんですが、患者さんはこれまでの治療中に注射や点滴の針を入れる時に痛い思いを繰り返しておられて、きっと今から針を入れる、という時、心理的にもストレスを感じ、筋肉を硬直させたり血管を収縮させていたのだと思います。痛みの記憶や数多くの治療、処置の記憶がからだを更に緊張させていた事が、病室に入った時の緊張した表情にも現れていました。
脚を優しく触れてマッサージする事、3人で明るくユーモラスに会話した事は患者さんのこころの緊張を和らげ、リラックスした事、マッサージで血流を刺激した事がからだの緊張もやわらげて筋肉や血管が弛緩して、処置がスムーズに行われたのではないかと、からだとこころの夫々の反応を実感したこの出来事。
もう15年近く前の事ですが、今でも看護師さんと患者さんとの会話を思い出します。
サロンでは、からだへのアプローチでゆるんで頂くので、からだとこころ、とからだを敢えて先に書いています。でも卵が先か鶏が先か、と同じように、からだが先かこころが先かはその時々で違うのだと思います。
からだを知る事はこころを知る事。こころを知る事はからだを知る事。
週末から春本番になりそうですね。春はからだと対話するのに絶好の季節。
麗らかな日、外に出て自然やからだと対話を楽しみましょう!